家に潜む危険「ヒートショック」による高齢者の死亡事故。しっかり対策で予防して、長生きしましょう!
厚生労働省の統計調査データによると、2021年に起きた家庭内溺死事故は7,184人/年となっており、 同年の交通死亡事故3,536人/年と比較すると、約2倍ほど家庭内の溺死事故によって大切な命を落とされていることが分かります。
家庭内の溺死事故は、そのほとんどが浴槽内で起こっており、そのうち93.38%が65歳以上の高齢者となっています。 そして、その要因のほとんどが、急激な温度の変化によって血圧が乱高下したり、脈拍が変動したりすることで起こる「ヒートショック」です。
もちろん、ヒートショックによって脳内出血や脳梗塞、大動脈解離、心筋梗塞などを発症し、それが直接の原因で亡くなる方もいますが、 多くは、ヒートショックによる体調不良や意識喪失によって、浴槽内で溺れることで溺死事故に繋がってしまうのです。 つまり、ヒートショックさえ起こさなければ救われた命であり、しっかり対策をして、ヒートショックの発生を予防していれば、 まだまだ元気に長生き出来ていた可能性が高いということです。
ヒートショックについて詳しく知り、しっかり対策をしていくことで、不慮の事故を未然に防ぎ、大切なご家族の命を守っていきましょう。
ヒートショックとは?
暖かい所から寒い所、寒い所から暖かい所に移動すると、血管が伸縮して血圧が上下し、 心臓や血管の疾患が起こることをヒートショックといいます。
例えば、冬場の入浴時を思い浮かべてください。 暖房の効いた暖かい居間から洗面脱衣所に移動し、寒い中で服を脱ぎ、さらに寒いお風呂の洗い場に裸で入る。 すると、寒さで血管が収縮し、血圧がどんどん上昇します。 冷えた体を温めようと、温かい風呂に入ると、直後は水圧や温度変化の影響で血圧が上がり、その後体が温まってくると血管が広がり、血圧が低下します。 そして浴槽から上がると、直後は水圧から解放されて血圧が下がり、寒い洗い場や脱衣所で体が冷えて血圧が上がります。
寒暖の温度差があればあるほど危険度が増すと言われており、毎日繰り返される短時間での血圧の乱高下は心臓に負担をかけ、心筋梗塞や脳卒中につながりかねません。
ヒートショックを起こしやすい人とは?
先ほど、ヒートショックは65歳以上の高齢者で多く起こっていると説明しましたが、その他の年代でも高血圧や不整脈、、動脈硬化などの血管系の既往症のある方はもちろん、糖尿病、肥満、睡眠時無呼吸症候群などの既往症のある方もヒートショックを起こしやすいと言われています。 また、既往症は無くても熱いお風呂が好きな方、飲酒後にお風呂に入る方、長風呂が好きな方などもリスクが高いと言われています。
ヒートショックはお風呂だけではない
ヒートショックは、寒暖差の温度差により血管が伸縮し、短時間での血圧の乱高下が原因ですので、 お風呂に入る時に限らず、暖かい所から寒い所への移動があるシーンでは同じようにヒートショックのリスクが高まります。 例えば、夜中のトイレやお風呂後の外出などもヒートショックのリスクは高まります。
入浴時や夜中のトイレで寒さを感じている方は、出来るだけ早めにヒートショック対策の実施をおすすめします。
ヒートショックを予防するための対策
10度以上の温度差に体がさらされると、ヒートショックのリスクが高まるので、さまざまな温度差を解消することが予防につながります。
(1)お風呂場編
◯あまりお金をかけず、すぐ出来る対策
・お湯や湯気による暖め
シャワーによるお湯溜めを行うことで、浴室内に湯気を充満させ、浴室を暖めます。 浴槽のフタを外してお湯をかき混ぜることで、浴室内に湯気を充満させ、浴室を暖めます。 シャワーで床面にお湯を撒き、床と浴室を暖めます。 このように浴室を暖めることで寒暖差を縮め、ヒートショックのリスクを軽減します。
・ウレタン製マットやスノコによる床からの冷気遮断
タイルや石貼り、古いユニットバスなどで床が冷たい場合は、ウレタン製のマットやスノコで床からの冷気を遮断します。 直接触れた際の冷たさも軽減されます。こちらも寒暖差を縮めるのに有効です。
・かけ湯やぬるめのシャワーで体をお湯の温度に慣らす
軽くかけ湯をして、いきなり浴槽に入るよりも、手足などから徐々にかけ湯をしたり、 ぬるめのシャワーで体をゆっくり暖めてから入浴することにより、体が急激な温度変化に晒されないようにすることでリスクを軽減出来ます。
・長湯や熱い風呂に入るのを避ける
給湯器の性能や浴室の温度にもよりますが、概ね38度から40度程度の湯温で、10分程度を目安に温まりましょう。 長湯は脱水症状や熱中症のリスクも高まり危険です。体に負担のかからない入浴を心がけましょう。
・浴槽から出る時はゆっくり何かにつかまりながら立ち上がる
浴槽で温まると、血管が拡張し、血圧が低下します。血圧が低下している状態で勢いよく浴槽から出ると、脳への血流が弱まり、 立ちくらみや失神することがあります。溺水事故につながる危険が高まるので、浴槽から出るときはゆっくりと何かにつかまりながら立ち上がるようにしましょう。
・食後間もなくや、飲酒後の入浴は控える
食後間もなくは血圧が下がり、意識障害を起こすリスクがあります。そのような状態で入浴すると、血圧の乱高下がより激しくなり、 ヒートショックのリスクが高まります。食後間もなくの入浴は出来るだけ避け、最低でも食後30分〜1時間後の入浴を心がけましょう。 また、飲酒後も血圧が下がり、アルコールによるふらつきなどもあるので、大変危険です。酔いが覚めてから入浴するようにしましょう。
・体調不良時や服薬後間もなくの入浴は控える
体の調子がすぐれない時は、無理せず入浴は控えましょう。入浴中に体調が急変すると、ヒートショックや浴室内事故のリスクが高まります。 また、薬の中には血圧を下げるものもあるので、服薬後間もない入浴も避けましょう。
・小型電気ヒーターで脱衣所、浴室を暖める
コンセント式の小型電気ヒーターを購入し、使用します。 脱衣所と浴室を入浴前に温めることで寒暖差をなくし、ヒートショックのリスクを軽減します。 小型電気ヒーターは、転倒時スイッチオフや過熱時の自動停止など、 安全に配慮した多機能な小型電気ヒーターの多くは1万円以内で購入可能です。 電気ヒーターなので、一酸化炭素中毒の心配もありません。
◯費用をかけた十分な対策
・床も冷えにくい、断熱性の高い浴室へリフォーム
近年のユニットバスは、各メーカー非常に断熱性能が高くなっており、また、洗い場床も冷たくなりづらいものもあるなど、 断熱性能の高いものが多くあります。 窓があるお風呂の場合は、樹脂サッシに変更したり、内窓を設置して二重窓にしたりするのも有効ですし、 浴室暖房換気乾燥機の設置も有効です。 これらの浴室リフォームを行うことで、温度差を気にせずに快適な入浴が出来るようになります。 信頼出来るリフォーム業者に相談すれば、お客さまのご要望やご自宅に合ったリフォーム方法を提案してくれるかと思います。
(2)トイレ編
◯あまりお金をかけず、すぐ出来る対策
・便座カバー、トイレマット、トイレスリッパの設置
冷たい便座におしりが触れるだけで血圧は上昇します。 設置面の冷たさを軽減するために便座カバーを付ける、床にマットを敷く、トイレ用のスリッパを置くなども有効です。
・夜中や早朝にトイレに行く際は、上着を羽織っていく
寝るときはあまり厚着はしないので、そのままでトイレに行くと、寒さで血圧が上がります。 布団から出てトイレに行くときは、一枚羽織って暖かくして行くようにしましょう。
・小型電気ヒーターの設置
トイレ近くにコンセントがあれば、脱衣所と同じく、コンセント式の小型電気ヒーターの購入、使用もおすすめです。 転倒時スイッチオフや過熱時の自動停止など、安全に配慮した多機能な小型電気ヒーターの多くは1万円以内で購入可能です。 電気ヒーターなので、一酸化炭素中毒の心配もありません。 人感センサー付きで すぐに暖かい風が出るものもあるので、ニーズに合わせて選ぶと良いかと思います。
◯費用をかけた十分な対策
・トイレリフォーム
昔ながらの和式トイレは、床がタイルのものが多く、冷え込みます。洋式トイレにリフォームし、床面をクッションフロアなどにすることで、 トイレ内の温度を上げることが出来ます。 また、便座を暖房機能付温水洗浄便座に変えるだけでも、お尻が触れた時の冷たさはなくなり、血圧上昇を抑えることが出来ます。 トイレリフォーム時に小型電気ヒーター用のコンセントを設置し、小型電気ヒーターを付けるのも良いかと思います。
(3)その他編
・各所への暖房機器の設置や全館暖房の導入
家の中の寒暖差をなくすことがヒートショックのリスク軽減にはとても有効です。 脱衣所やトイレはもちろん、廊下やキッチンなど、各所に暖房器具を設置したり、 遠赤外線による輻射熱で家全体を暖かくする薪ストーブを設置したり、 全館空調や1階全面床暖房などの全館暖房を導入したりするなど、お部屋全体を暖められるようにします。
・窓の断熱をはじめとする断熱改修
家で一番熱の出入りが大きいのは窓やドアなどの開口部です。樹脂サッシへの交換や、内窓を付けて二重サッシにすると、 家の断熱性能が向上し、室内の寒暖差が軽減します。光熱費の節約、結露の減少などの効果もあります。
いかがでしたでしょうか。
ヒートショックがどういうものかを知り、しっかり対策を施せば、守れる命がたくさんあります。 大切なご家族の命を守るためにも、情報を共有し、出来る範囲の対策をしっかりすることが大切です。
